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犬と猫の整形外科病院 院長の赤木です。
今回は浅趾屈筋腱外方脱臼の症例をご紹介いたします。
浅趾屈筋腱外方脱臼はあまり馴染みのない病名かと思います。実際に遭遇することも比較的稀な疾患です。
浅趾屈筋腱はアキレス腱(総踵骨腱)の一部で、踵骨(かかとの骨)の尾側(後側)を通って、足の趾(ゆび)にまで繋がっています。
診断は触診で浅趾屈筋腱の脱臼を触知することです。触診で最初から脱臼が分かるかというと、私の場合は、恥ずかしながら分からないことが多いです。
先述の通り非常に稀な疾患なので、代表的な部位の触診をして、それでもわからなかった場合にレントゲン撮影をして、改めて触診をしてようやく気づくというケースが多いです。
レントゲンでも脱臼していることが分かるわけではないのですが、腫脹がはっきりと分かります。
そこで改めてこの疾患を疑い、触診を行って気づくパターンが大半です。
レントゲン撮影を行うと、左側のオレンジの丸で囲った白い部分が非常に目立つと思います。
これはこの部位で炎症が起きていることを示しています。
本症例は最初は膝蓋骨内方脱臼の悪化ということでご来院されました。触診では間違いなく膝蓋骨内方脱臼グレード3があり、年齢的には前十字靭帯靭帯損傷も疑われましたが、膝関節に非常に強い関節液貯留も認められず、跛行の原因のメインは浅趾屈筋腱外方脱臼と診断しました。
オーナー様には膝蓋骨内方脱臼との同時対応か、浅趾屈筋腱外方脱臼だけの対応かそれぞれについてご相談し、浅趾屈筋腱外方脱臼のみの対応でご同意を頂きました。
手術は切皮して、浅趾屈筋腱を露出しました。滑液包という浅趾屈筋腱を包んでいる膜が伸長していたので、内側と外側を適切な長さに切除してバランスを取って縫合して終了しました。
手術時間はおよそ40分程度でした。
スクリューや細い針金を踵骨に刺入して、人工的に土手を作成して浅趾屈筋腱が脱臼しないようにする方法がありますが、この人工的に作成した土手に腱が接触してさらに酷い炎症を起こすことがあるので、私はお勧めしていません。
術後2週間は患部に包帯を巻いて、安定化をサポートします。足首のこの部位の包帯はどうしても包帯の中で動いてしまったり、蒸れてしまったりします。その結果、皮膚炎が生じてしまい、本症例も包帯解除後に皮膚炎でかかりつけ医様にケアをお願いする形になり、オーナー様とかかりつけ医様にご迷惑をおかけしてしまいした。
本症例は術後1ヵ月を経過して、脱臼もなく跛行も消失したので、強い運動制限は解除になりました。次回、術後3ヵ月検診で問題なければ治療終了になります。
余談ですが・・・、
指(ゆび):人の手や犬猫の前足の”ゆび”の事です
趾(ゆび):人の足や犬猫の後足の”ゆび”の事です。”ゆび”や”あしゆび”から変換すると出てきます。
当院は開業したての割には、少し珍しい症例が続いており、自身も悩む症例が多く来院されています。自身の経験や知識の未熟さも痛感させられますが、何とかお悩みのオーナー様と患者様のお力になれるように頑張らせて頂きたいと思います。
赤木