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犬と猫の整形外科病院 院長の赤木です。
今回は、前回の投稿内容と似ているのですが、膝蓋骨内方脱臼と前十字靭帯完全断裂の患者様をご紹介させて下さい。
症例は12歳のポメラニアンです。右後肢を痛がって挙上する、との主訴で近隣の動物病院さんを受診され、そこから当院に紹介来院されました。
触診とX線検査の結果、右側膝蓋骨内方脱臼グレード4、前十字靭帯完全断裂と診断しました。
前十字靭帯断裂については、こちらをご参照下さい。
以前にご紹介させて頂いた症例と経過などもかなり似ていたのですが、少し高齢で関節炎の進行が疑われました。
膝蓋骨内方脱臼グレード4のため、本来はCT検査を行って、大腿骨の矯正骨切りの術前計画も立てていく必要があるのですが、本症例はおそらく靭帯損傷に伴って脱臼の程度が悪化した結果のグレード4と判断しました。レントゲン検査で全てイメージするのは難しいのですが、本症例は周辺の軟部組織の緊張や拘縮が解除できれば脱臼整復も可能だと判断しました。
膝の滑車溝はこのようにかなり軟骨が痛んでいる状態でした。
比較的若齢の症例では、
このように、若い脱臼の程度が進んでいない症例では、白い軟骨が綺麗に存在してます。軟骨が損傷を受けると白くて綺麗な軟骨が痛んでしまい、一度傷んでしまった軟骨は元に戻ることはありません。
膝蓋骨内方脱臼は手術を実施する基準は何ですか?
と、ご相談を多く受けますが、おそらく多くの症例は若いうちに手術できれば下の症例のように軟骨が多く残存している状態で手術できて、術後も症状が出にくい、良好な予後が得られると思います。
逆に軟骨損傷が重度の症例では、手術しても軟骨自体の損傷は治療できないので、症状が残存しやすくなると思います。こういった状態を観察すると、犬猫も人間と同じで早期診断・早期治療が望ましいと、強く思います。
少し話が逸れましたが、本症例は症状のメインは前十字靭帯断裂でしたのでTPLOを実施して終了しました。
内側の拘縮している軟部組織をリリースするのに少し時間がかかりましたが、切皮から閉創まで70分程度で終了しました。麻酔時間は120分程度でした
術後2週間が経過する頃には手術した足も非常によく使ってくれていました。
術後1ヵ月検診でも大きな異常なく経過していましたので、安静管理も解除して少しずつ日常生活に戻ってもらうようにお伝えしました。次回は術後3ヵ月検診で、問題なければ終了です。
前十字靭帯断裂は反対側の断裂リスクもあるので、経過に注意が必要ですが元通りの生活ができるように願っています。
赤木