FAQ – MPL/LPL
膝蓋骨内方/外方脱臼
[MPL/LPL]手術のQ&A
膝蓋骨内方/外方脱臼[MPL/LPL](パテラ)手術のQ&A事例です。
お役立ていただければ幸いです。
手術について
日帰りの手術でも問題ないでしょうか?
当院は開院して以来、9割以上の患者様が手術当日に退院(日帰り)しています。
基礎疾患のない患者様で、麻酔覚醒後2時間以内に大きなトラブルが生じなければ、ご自宅で経過観察をしても大きな問題にはなりにくいと考えています。
以上の理由から、本人もリラックスできて、オーナー様も異変に気づきやすい自宅での経過観察をお勧めしています。
帰宅して数時間後から少しずつ局所麻酔薬の効果が薄くなり、痛むケースはあるようです。その場合は鎮痛剤の内服を少し早めることを提案しています。
術後について
手術翌日になっても、なんとなく元気が無く、表情に覇気が無い。好きなおもちゃ・おやつを与えても喜ばないのですが具合が悪いのでしょうか?
全身麻酔の影響や手術の炎症による影響は個体差がありますが、手術当日を含め3~4日程度持続する子もいるので、手術前よりあまり元気が無いことはよくあります。手術部位の痛みや違和感もあるため、いつもとは違う状態となっていることを理解してあげてください。
遅くともに術後5~6日程度で表情がいつも通りに戻ってくることがほとんどです。
明らかにぐったりしている、食欲がない、嘔吐する場合は当院か、かかりつけ医様への受診をお願いします。その場合には術後の胃腸炎を生じている可能性が高いと思われます。
手術後、3~4日後に包帯を外すと言われましたが、膝の屈伸運動が出来てしまうと
糸が緩んでしまったりしませんか?
傷口に関して、目に見えるのは外側の縫合糸だけですが、内側の筋肉や筋膜もしっかり縫っていますので、特別に問題となることはありません。
傷口を舐めたり噛んだりしないようにエリザベスカラーの装着を継続してお願いします。
粗面転移術を実施して、インプラントを使用した患者様は1週間程度の包帯をお願いしていることが多いです。
包帯を外したら、傷口の一部から出血したのですが、大丈夫でしょうか?
じわじわと出血が続くようであれば、すぐに当院またはかかりつけ病院様の受診をお願いしておりますが、わずかな出血や薄い血混じりの漿液(しょうえき)が出てすぐに固まってしまう程度であれば経過観察で構いません。
患部ケア・薬について
塗り薬(軟膏)を傷口に塗ったのですが、軟膏がベッドや床にベタベタ付いてしまうのでガーゼとペット用粘着包帯で舐めないように軽めに巻いて保護しても良いでしょうか?
ガーゼで保護する事は全く問題ありませんが、粘着包帯や医療用の包帯の固定はお勧めしません。包帯は弱く巻いているつもりでも、きつめに駆血されてしまい、足先が絞扼(神経や血管が圧迫されて締め付けられること)されて腫れてくる症例を経験しております。
原則は塗り薬を傷口の乾燥防止程度に薄く塗るか、ガーゼで保護する場合は軽くテープで固定するのみとしてください。時々、ガーゼやテープを食べてしまったりする場合がありますので注意が必要です。
エリザベスカラーはいつまで装着する必要がありますか?
傷口(創部)を舐めたり噛んだり気にしている様子がある場合は必要となりますが、気にしないようであれば、抜糸後2~3日で解除してよいと考えます。
抜糸後にも軟膏を塗る必要がありますか?
抜糸後の状態によりますが、ほとんどの場合、抜糸後に軟膏を塗る必要はないと考えています。
術後7日・それ以降
朝起きた時に、手術前にもパテラの子が良くする足をグーっと伸ばす兆候が、手術をした後でも見受けられるのですが、これは再脱臼のサインなのでしょうか。
足を伸ばす様子が食事中や歩いている最中にも見受けられるのでなければ、大丈夫です。
術後数ヵ月は時折、ケンケンしたり伸ばしたりする様子が認められますが、明らかに痛みや持続するような様子がなければ様子見しても大丈夫です。
術後7日が経ちました。家の中では、ほとんどケンケンと3本で歩いているのですが、
手術をした足がつくようになるのはいつ頃になりますか?
個体差はありますが、一般的には術後3~7日ごろから手術した足を地面につき始めますが、家の中はケンケンで歩く、あるいは少し体重をかけにくそうに歩くケースが多いように感じます。
抜糸前の術後2週間以内の期間は、足を使い始めている初期の段階となりますので、腫れや違和感が残っていますので焦らずじっくりと待ってあげてください。
もし、抜糸の段階でも上記のような状態が持続して悪化するようであれば、本人が3本足での生活スタイルを確立させているかもしれません。そうなると、どんどん手術した足を使わなくなるため、リハビリの専門外来への受診をご提案させて頂くことがあります。
お散歩は、いつから・どの程度開始しても良いでしょうか?
原則として術後1ヵ月の散歩は禁止させて頂いております。
術後2週目以降で排泄の場合のみ、リードを短くしてオーナー様と歩調を合わせてお散歩できる場合に限り、抜糸後から5~10分程度のお散歩は可能となります。
運動制限によってフラストレーションが溜まり、動き回るような場合にも同様に気分転換として5分程度のお散歩を許可しています。
術後のリハビリとして上り坂で筋力を鍛える事が良いと聞きましたが、いつ頃から開始しても良いでしょうか?
上り坂はそれなりに筋肉に負担をかけますので、術後1ヵ月くらいからのチャレンジとしてください。リハビリの原則は平地でのリフレッシュ程度から開始するようにお願いします。
術後1ヵ月以内のリビングでの安静管理を教えてください。
原則はケージやサークル内から出ないようにしてください。
リードを使用されたオーナー様は、リードを柱やテーブルの高い位置に固定して、足に引っかからないように工夫されたそうです。この場合のリードの長さは体格にもよりますが、5kg以内の小型犬であれば、1m程度にするのが良いと思います。
興奮したり嬉しいと2本足で立ってしまうのですが、やめさせた方が良いでしょうか?
可能な限り2本立ちは避けた方が良いのですが、なかなか興奮した子にこれを辞めさせるのは難しいように思います。もし立ってしまった場合には、少し抱っこをしてなだめてから床にゆっくりと降ろす、という形でストップして頂けたらと考えます。
再脱臼・その他
術後1ヵ月が経過して、運動制限が解除になりました。それまで経過は順調だったのに、急にケンケンしたり足を挙上する様子がありました。再脱臼でしょうか?
まずは診察をご提案していますが、どうしても難しい場合には動画や様子をメールでお送りください。
経過が順調な患者様の場合は、術後2週目、術後1ヵ月、術後3ヵ月のタイミングで運動制限を少しずつ解除しています。その際に、運動強度が上がることで一過性に症状が出ることがあります。まずは焦らずにどんな時に症状が出るのか、その時はどんな様子なのか、確認しながらご相談いただけますと幸いです。
手術をした足の太ももにしこり(腫瘤)のようなものがあります。
診察してからの判断にはなりますが、おそらく手術の際に切断した縫工筋という筋肉の断端が丸まってできたものだと思います。自然に小さく(退縮)なりますので、ご安心ください。
膝蓋骨内方/外方脱臼[MPL/LPL](パテラ)手術のQ&Aは、当院で手術を実施した
〝ベルちゃん〟のオーナー様のご厚意と
ご協力により作成できました。
この場を借りて厚く御礼申し上げます。