- TEL.
- 03-5981-9783
Radial and Ulnar Fractures
橈尺骨骨折
橈尺骨とは
橈尺骨(とうしゃっこつ)は、肘の関節と手首(手根)の関節の間に存在する2本の骨の事を指します(Fig1)。
- 尺骨
-
手首の外側の骨を体に近い側へ辿ると私達が一般的に〝肘〟と呼ぶ場所に辿り着きます。こちらの骨が尺骨です(Fig1)。
- 橈骨
-
手首の内側の骨を同じように辿っていくと途中で筋肉に埋もれて分からなくなると思います。こちらが橈骨という骨です(Fig1)。
それぞれで担っている役割が異なるのですが、尺骨という骨は、肘の関節では重要な役割を果たしますが、体重を支えるという点では大きな役割は果たしておらず、特に犬では橈骨という骨が体重の大半を支えている骨になります。
骨折の原因について
骨折する原因は様々ですが、ソファやローテーブル、オーナー様のお膝から等々、数十cmの高さからジャンプしたり、落下した小型犬が来院するケースが非常に多いです。
小型犬の橈尺骨が折れやすい原因についても研究されていますが、そもそも体が小さいので強度が弱いため、皮質骨と言われる骨の中でも硬い部分の割合が多いので、〝しなり〟が少ないため、あるいはよく骨折する手根関節に近い部分は血流が少ないため、など様々に報告されています。
治療とその注意点
(※写真は拡大できます)
ヒトでは骨折の多くは不完全骨折と言われる、いわゆる亀裂骨折や“ひび”というような骨折が多いため、ギプス固定(外固定)が選択されることも少なくありません。そもそも犬や猫と違い、医師からの指示を聞いてくれるため、安静管理が可能と言うこともその理由に挙げられます。
ヒトと違って、犬や猫では完全骨折と言われる、骨が完全に互い違いになるような骨折が大半を占めます(Fig2)。
こうなってしまうと、外固定での治癒は非常に困難になります。また、こういった外固定ではうまく骨がくっつく(〝癒合〟といいます)としても、曲がって癒合(変形癒合)、最悪の場合は骨が癒合しない〝癒合不全〟と言う、恐ろしい状態に陥ります。
癒合不全に至った骨は非常に大がかりな再手術か、最悪の場合は断脚に至る危険性があります。そのため、小型犬の橈尺骨骨折は、たかが骨折とは侮らずに一回の手術でしっかりと治療する必要があります。
犬や猫での骨折治療のゴールドスタンダードは、プレートとスクリューによって折れた骨同士を元の位置に整復して安定化する内固定手術です(Fig3)。
当院でもこの治療法を第一選択としています。〝パキッ〟と折れたような単純骨折の場合、麻酔の覚醒などに問題がなければ翌日には退院できるケースが大半です。
術後~回復まで
およそ2週間後に抜糸しますが、それまではエリザベスカラーなどで傷口を保護します。
また術後1ヵ月間は少し狭いスペースで過ごす〝ケージレスト〟の実施をお願いしています。
1ヵ月検診で問題がなければ、リードをつけてのお散歩、シャンプーやトリミングが可能となります。
その後は骨の状態をレントゲン検査で確認しつつ、骨の癒合が確認できたらスクリューの本数を減らす〝間引き〟という手術の実施を推奨しています。
(この手術については、獣医さんの間でも意見が分かれており、判断が難しいのですが、当院では積極的に間引き手術を実施しています。詳細は直接ご相談ください。)
Flow of Treatment
当院の診療の流れ
まずは、飼い主様から動物たちの症状や経過について詳しくお伺いいたします。いつから症状が現れたのか、どのような状況で悪化するのか、普段の様子との違いなど、できるだけ詳細な情報をお聞かせください。
問診内容に基づき、獣医師が動物たちを丁寧に診察いたします。
立っているときの姿勢、筋肉のつきかた、重心移動などを評価します。どの足をかばって歩いているのか、どんな風に歩いているのかを確認し、症状の原因を探ります。
必要に応じて、血液検査、レントゲン検査、関節液検査をなどの検査を行い、状態と原因の把握に努めます。
神経疾患や、骨折の詳細を把握するためにはCT/MRI検査をご提案することがあります。その場合は、当院からはYPC東京動物画像センター様での検査をご提案させて頂いております。
動物たちの負担を最小限に抑え、安全かつ効果的な治療を行います。投薬、理学療法、手術など、症状や病状に合わせた治療法を実施いたします。
治療後も、定期的な診察を行い、動物たちの状態を経過観察いたします。必要に応じて、検査を再実施したり、治療内容を調整したりすることもございます。また、自宅でのケア方法についてもアドバイスさせていただきます。