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膝蓋骨内方脱臼、いわゆる”パテラ”かもしれない愛犬を病院に連れていくときは、歩き方の動画、いつ出るかのメモ、これまでの経緯の3つがあると、診察がスムーズに進みます。
この記事では、パテラかもしれない犬を病院に連れていく前にあると助かるもの、キャリーの選び方、当日までの準備と診察の流れ、診察で伝えていただきたいことについてご紹介します。
1. 受診前にあると助かるもの
必ず用意しなければならないものはありません。ただ、「動画」「メモ」「これまでの経緯」の3つがあると、診察がスムーズに進みます。
① 歩き方の動画
パテラの症状は一瞬で終わることが多く、診察室では再現しないこともあります。おうちで撮った動画があると、診察の大きな助けになります。
スマートフォンで、明るい場所で、歩いている全身が入るように(足だけのアップにしない)、横からを基本に正面や後ろからも撮っておいてください。走っているときだけ出るなら、その動画もあると判断が進むでしょう。
② いつ出るかのメモ
- 朝起きた直後だけか、散歩の後半だけか、興奮したときだけか
- 左右どちらの足か(毎回同じ足か、日によって違うか)
- 週に何回くらいか
問診では、いつから症状が出たのか、どのような状況で悪化するのか、普段の様子との違いを伺います。メモがあると、この問診でお伝えしやすくなります。
③ これまでの経緯
トリマーさんや獣医さんに指摘された時期と内容、以前に別の病院で言われたグレード(パテラの重症度)と提案された治療の内容、飲んでいるお薬があればその名前。思い出せる範囲で書き出しておくと、診察がスムーズです。
オーナー様からの「そういえば…」というひと言が、隠れたリスクに気づくための手がかりになります。些細に思えることでも、遠慮なくお伝えください。
2. 連れていくときのキャリーは、足場がしっかりしたものを
愛犬を連れていくキャリーは、足場がしっかりしているものが好ましいです。肩掛けタイプは、あまりおすすめしていません。
もうひとつ見ていただきたいのが、出入り口の数です。横からも天井からも開けられるタイプだと、診療がスムーズに進められます。出入り口が1つだけだと、なかなか出せないことがあるためです。
当院では、リッチェルのキャリー・クレートをおすすめしています。買い替えの予定があれば、足場と出入り口の2点を目安に選んでみてください。
3. 受診までにしないでいただきたいこと
ご自宅で膝のお皿を自分ではめようとしないでください。膝の関節には多くの靭帯や軟骨が集まっていて、無理な力をかけるとそれらを傷つけるおそれがあります。お皿を戻すのは、動物病院での処置です。
痛み止めの自己判断での使用も避けてください。人用のお薬は、犬では安全域(安全に使える量の幅)が狭いものがあります。以前ほかの子に処方された薬も同じです。
4. 予約と、当日の食事について
初診の前に、予約の方法と食事の決まりを確認しておいてください。病院によって違うので、ここでは当院の例です。
当院は予約制で、お電話かWEBから予約をお取りいただく形です。予約時間の5〜10分前に余裕を持ったご来院をお願いしています。診察の進行によってはお待たせすることがあり、緊急性の高い患者様が来院された場合は、順番が前後することもある点はご了承ください。
初診で来院される患者様には、前日の夜10時以降は絶食、当日は診察の3時間前からの絶水をお願いしています。血液検査やレントゲン検査などに備えるためです。1歳未満や極端に体格の小さな子は低血糖になるおそれがあるため、砂糖水(人が舐めて甘いと感じる程度の濃さ)を診察3時間前に体重1kgあたり1ml程度飲ませていただくようお願いしています。
食事の決まりは病院ごとに異なります。予約の際に「初診で検査を受ける可能性がある」とお伝えのうえ、食事をどうするか確認しておくと安心です。
5. 当日の診察はどう進むのか
当院では、次の流れで診ています(診療の流れ)。
まず問診で、いつから、どんなときに症状が出るのかを伺います。1章のメモと動画が役立つのは、この場面です。
次に、視診(立っているときの姿勢、筋肉のつきかた、重心移動を評価すること)と歩行検査で、どの足をかばって歩いているのかを確認します。そのうえで行うのが、触診(獣医師が膝を触って確かめること)です。触診では、膝のお皿を実際に動かして、外れ方と戻り方を確かめます。ここで判断するのがパテラのグレード、つまり重症度です。
必要に応じて、血液検査、レントゲン検査、関節液検査(関節の中の液を調べる検査)を行い、骨の並びや、お皿が収まっている溝の状態を確認します。検査結果を総合して診断し、治療内容、治療期間、費用、手術が必要な場合はそのリスクや成功率について説明を受けたうえで、治療計画を一緒に決めていく流れです。
※なお、診察や検査には、血液検査で針を刺すといった負担と、犬猫へのストレスが生じます。検査や処置には細心の注意を払っていますが、この点はあらかじめご了承ください。
6. 入院について
パテラの治療において入院されるケースはほとんどなく、基本的に日帰り治療いただけます。
緊急での治療を要する場合で、夜間になった場合のみ、入院いただくケースがありますが、ごく稀です。
7. 費用について
当院では、検査、治療、手術に必要な費用を事前にお伝えする方針にしています。
検査の費用は検査の前に、治療や手術の費用は検査の結果をもとに治療計画を決める段階です。緊急時には治療を優先するため、お伝えできないことがあります。また、初診前のお電話での費用のお問い合わせにはお応えしていません。その子を診ずにお答えすると、かえって不正確になるためです。
8. 診察で、伝えておきたいこと
不安に思っていることは、診察のときに遠慮なくお伝えください。
たとえば麻酔への不安です。当院で治療を受けたボストンテリアのオーナー様は、短頭種(いわゆるハナペチャと言われる犬種)であることから麻酔のトラブルをとにかく心配されていました。そのお気持ちを最初から伺っていたため、麻酔科医の先生をご提案させていただきました。
9. 手術になった場合の流れ
手術の内容・術後の生活については、膝蓋骨内方脱臼のページで詳しくご紹介しています。
また、実際に当院でパテラの治療を受けた体験談として、ボストンテリアのピリナちゃんの飼い主様にお話を伺わせていただいたインタビュー記事もございます。参考になる内容かと思いますので、ぜひこちらもご覧ください。
10. まとめ
- 受診前に、歩き方の動画(明るい場所・全身・横から)、いつ出るかのメモ、これまでの経緯があると、診察がスムーズに進みます。キャリーは足場がしっかりしていて、横と天井の両方から開くものが好ましいです
- ご自宅でお皿をはめようとしない、人用の痛み止めを使わない。この2つは受診までに守っていただきたいことです
- 初診でも検査に備えて絶食・絶水をお願いしている病院があります。予約の際に食事の決まりを確認しておくと安心です
必ず用意しなければならないものはありません。動画を1本撮っておくだけでも、診察の大きな助けになります。
この記事の監修

赤木 浩之 / 犬と猫の整形外科病院 院長
獣医学博士
臨床10年以上
日本獣医麻酔外科学会 整形外科委員会 特別委員
日本獣医麻酔外科学会 東京地区委員
日本獣医生命科学大学獣医外科学教室所属大学院特別研究生
東京農工大学卒業後、日本獣医生命科学大学大学院で獣医学博士を取得。YPC東京動物整形外科病院にて数多くの手術を執刀。同院外科部長を経て、犬と猫の整形外科病院を開院。



