犬のパテラ グレード1〜4の確かめ方。治療すべき状態は?

膝蓋骨内方脱臼、いわゆる”パテラ”にはグレード(お皿の外れやすさを4段階で表した重症度)があり、それは獣医師の触診で決まります。獣医師が膝を手で触り、お皿を実際に動かして確かめることでグレードを判断します。おうちで歩き方を見ているだけでは、グレードを確定することはできません。

ただ、グレードごとに見えやすい仕草の違いはあります。この記事では、グレード1〜4がそれぞれどんな状態か、おうちで見える仕草の目安、動物病院での確かめ方、そしてグレード別に治療をどう考えるかについてご紹介します。

目次

1. パテラのグレードは、獣医師の触診で決まる

グレード1〜4の分け方は、どれも「触診でお皿が外れるか」「外れたお皿がどう戻るか」で定義されています。つまり、グレードは”触って確かめるもの”として作られた分類です。

おうちでの観察が役に立たない、という意味ではありません。仕草の違いは受診を考える目安になりますし、診察のときの大きな助けにもなります。ただ、それはあくまで目安で、確定はできないと考えていただくのが正確です。

実際に、歩き方にあまり症状がなかったのに、健診の触診でグレード3と分かった子もいます。反対に、一瞬だけケンケンしてすぐ元に戻る仕草は、グレード2でよく見られるものです。見た目の症状の軽さと、グレードの数字は、そのまま重なるわけではありません。

なお、グレードを確かめようとして、ご自宅でお皿を押したり動かしたりしないでください。膝の関節には多くの靭帯や軟骨が集まっていて、無理な力をかけるとそれらを傷つけるおそれがあります。

2. パテラのグレード1〜4、それぞれどんな状態か

グレード1は症状がほとんど出ないため気づかれにくく、来院される子はグレード2か3の状態が多いです。グレード4は歩き方の変化がはっきり出ている段階です。

グレード1

定義は「触診で膝蓋骨が脱臼することが触知される。手を離すとすぐに整復される状態」です。整復とは、外れたお皿が元の溝に戻ることをいいます。

おうちで見える仕草は、ほとんどありません。症状は軽くまれで、症状が出ないまま経過する子もいます。そのため、おうちで気づくのは難しいグレードです。

グレード2

定義は「触診で膝蓋骨が脱臼し、屈伸することで整復される状態」です。手で押すと外れますが、膝を曲げ伸ばしすると元の溝に戻ります。

おうちで見えやすいのは、歩いている途中で一瞬だけ後ろ足を浮かせてケンケンし、数歩でまた普通に歩き出すような仕草です。後ろ足をピンと伸ばす、ブルッと振るという動きも、外れたお皿を自分で戻している可能性があります。

このグレード2の仕草については、犬が後ろ足を伸ばす・スキップ歩きはパテラの初期サイン?で詳しくご紹介しています。

グレード3

定義は「基本的に脱臼しており、触診で整復される。容易に脱臼する位置に戻る状態」です。ふだんはお皿が外れていて、手で戻してもすぐに外れた位置に戻ってしまいます。

ご家庭で見えやすいのは、足をかばうような歩き方が「一瞬」ではなく続いている状態です。ただし、グレード3でもあまり症状が出ていない子はいます。歩き方が普通に見えるからといって、グレードが低いとは限りません。

グレード4

定義は「常に脱臼しており、触診でも整復されない状態」です。お皿が外れたままで、手で戻すこともできません。

歩き方の変化がはっきり出ている段階で、膝を曲げたまま、腰を落としたような姿勢で歩く子もいます。後ろ足の見た目や歩き方の変化として、オーナー様が気づきやすい段階です。

3. なぜ同じグレードでも、症状の出方は違うのでしょうか?

グレードは「お皿の外れやすさ」の分類であって、「痛みの強さ」の分類ではないからです。痛みや違和感の出方は、膝の中の軟骨の状態、体重、年齢によって大きく変わります。

膝のお皿と溝の接触面は、”硝子軟骨”という非常になめらかな軟骨でできています。お皿が外れて硝子軟骨ではない場所を動くたびに、この軟骨が損傷して失われていきます。失われた硝子軟骨は、自然には再生しません。

若い子や体重の軽い子では、お皿が外れていても比較的問題になりにくいです。体重が重くなったり、中高齢になったりするにつれて、痛みや違和感につながり、活動性や運動能力が下がっていきます。

実際の膝の中を見ると、若く脱臼の程度が進んでいない子では、白いきれいな軟骨が残っています。一方、進行した子では、軟骨がかなり傷んでいる状態でした。

院長ブログ 12歳のポメラニアンさんの症例

※手術の様子を撮影した写真が掲載されています。血液や患部の写真が苦手な方はご注意ください。

つまり、同じグレード2でも若く軽い子はほとんど症状がなく、体重のある中高齢の子は痛みが出ているということが起こります。グレードの数字だけでなく「いま症状があるか」を合わせて見るのはそのためです。

なお、後ろ足をかばう・痛がるといった症状は、パテラ以外の病気でも起こります。
パテラの子が、前十字靭帯(膝の中で太ももの骨とすねの骨をつなぐ靭帯)の断裂を併発していた例もありました。パテラだと分かっている子でも、症状が変わったときは一度かかりつけ医さんなどに診てもらうことをおすすめします。

4. パテラのグレード別に、治療をどう考えるか

症状があるケース、そしてグレード3以上のケースでは、比較的積極的に治療を進めることが多いです。症状のない中高齢のケースでは、経過観察にすることが比較的多いと思います。経過観察とは、手術をせず、定期的に膝の状態を確認していくことです。

グレードごとに整理すると、考え方は次のようになります。

  • グレード1:症状が軽いか出ていないことが多く、経過観察が中心です。体重を増やしすぎない、床を滑りにくくするといった日常の見直しをしながら、定期的に膝の状態を確認します
  • グレード2:判断が分かれるグレードです。症状がなければ経過観察を選ぶことも多く、症状が出ている・活動性が高い・体重があるといった条件がそろうと、早めの治療を考えることもあります
  • グレード3・4:ふだんからお皿が外れている状態なので、比較的積極的に治療を進めることが多いです
  • 症状のない中高齢:グレードにかかわらず、経過観察にすることが比較的多いです

ただし、「グレード2だから様子見」と一律に決まるわけではありません。両足ともグレード2と診断されたボストンテリアの子で、活動性が高く、体格相応に体重もあったため、オーナー様が早期の治療を希望され、手術に進んだケースがありました。

院長ブログ パテラグレード2のボストンテリアさんの症例

ここで押さえていただきたいのは、経過観察は「治す」ための選択ではない、という点です。お薬や安静で一時的に症状がなくなる”良化”はあっても、脱臼しなくなる”治癒”はありません。経過観察は、「今は手術をしない」という判断と、その後の定期的な確認をセットにしたものです。

いずれも症例ごとに状況が違い、担当の先生や病院さんの考え方もあります。グレードの数字を聞いたら、「症状はあるか」「体重と年齢はどうか」「経過観察なら次はいつ確認するか」を、その場で先生に聞いてみてください。

5. 動物病院では、パテラのグレードをどう確かめるのか

問診、歩き方の確認と触診、レントゲンなどの検査という流れで確かめます(診療の流れ)。グレードそのものは、このうちの触診で判定します。

問診では、いつから・どんなときに症状が出るか、ふだんとの違いを伺います。症状は一瞬で、診察室では再現しないこともあります。おうちで撮った歩き方の動画があると、判断が大きく進みます。撮り方は犬が後ろ足を伸ばす・スキップ歩きはパテラの初期サイン?にまとめています。

次に、立っている姿勢や筋肉のつき方、どの足をかばって歩いているかを見たうえで、獣医師が膝を触ります。触診では、膝を曲げ伸ばししながらお皿を指で押し、外れるかどうかを確かめます。外れた場合は、手を離すと戻るのか、曲げ伸ばしで戻るのか、それとも戻らないのかを見ます。この「外れ方」と「戻り方」の組み合わせが、第2章の定義のとおりグレード1〜4に当たります。

触診のあと、必要に応じてレントゲン検査、血液検査、関節液検査(関節の中の液を調べる検査)を行います。グレードの判定は触診で行い、レントゲンは骨の並びなど、脱臼に伴う骨の変化を見るための検査です。骨の変化は、治療を考えるうえでの材料になります。

検査結果をもとに診断し、治療が必要と判断した場合は、治療内容・期間・費用・手術の場合のリスクや成功率について説明を受けます。そのうえで、治療方針を決めていく流れです。

6. 手術になった場合、どんな流れになるのか

実際に当院でパテラの治療を受けた体験談として、ボストンテリアのピリナちゃんの飼い主様にお話を伺わせていただいたインタビュー記事もございます。参考になる内容かと思いますので、ぜひこちらもご覧ください。

パテラの治療を受けた飼い主様の声

7. よくあるご質問

Q. 獣医さんにパテラのグレード2と言われました。放っておくとグレードは進みますか?

A. 進むことがあります。経過観察や体重管理は、脱臼の原因になっている骨や関節の構造そのものを直すものではないため、時間とともに脱臼が進行することはあります。また、お皿が外れるたびに膝の硝子軟骨が失われていき、失われた軟骨は再生しません。経過観察を選んだ場合も、定期的に膝の状態を確認してもらうようにしてください。

Q. パテラのグレードは、何歳ごろに分かりますか?

A. どの年齢でも起こる病気ですが、症状は1歳になる前に出始めることが多いとされています。実際に、1歳前後の健診の触診でグレード3と分かった子もいます。子犬のうちに指摘を受けた場合も、グレードを確認しておくと、経過観察でよいのか、治療を考える段階なのかが分かります。

8. まとめ

  • グレード1〜4は、獣医師の触診で「お皿が外れるか・どう戻るか」を確かめて決まります。おうちの観察は受診の目安で、確定はできません
  • 一瞬のケンケンや後ろ足を伸ばす仕草はグレード2で見えやすく、足をかばう歩き方が続くならグレード3以上の可能性があります。ただし、グレード3でも症状の少ない子はいます
  • 同じグレードでも、軟骨の状態・体重・年齢で症状の出方は変わります。グレードの数字と「今、症状があるか」を合わせて考えます
  • 症状があるケースとグレード3以上は比較的積極的に治療、症状のない中高齢は経過観察が多い、というのが基本の考え方です。グレード2は条件によって判断が分かれます

「うちの子はどのグレードなのか」が気になったら、歩き方の動画を撮ったうえで、一度かかりつけの動物病院さんで触診を受けてみてください。

この記事の監修

赤木 浩之 / 犬と猫の整形外科病院 院長

獣医学博士
臨床10年以上

日本獣医麻酔外科学会 整形外科委員会 特別委員
日本獣医麻酔外科学会 東京地区委員
日本獣医生命科学大学獣医外科学教室所属大学院特別研究生

東京農工大学卒業後、日本獣医生命科学大学大学院で獣医学博士を取得。YPC東京動物整形外科病院にて数多くの手術を執刀。同院外科部長を経て、犬と猫の整形外科病院を開院。

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